国立景観訴訟から10年、当時「景観利益」を認め、「高さ20mを超える部分の撤去」を命じた東京地裁判決は、私も含めまちづくりに関わっていた住民たちに嬉しい衝撃を与えたことは覚えている方が多いと思います。
この裁判は高裁で覆され、結局最高裁まで行き、住民の具体的利益侵害がないということで撤去はされませんでしたが、景観利益という概念が確立される社会的エポックとなりました。
しかし、その後、事業者明和地所から営業妨害を主張する損害賠償請求訴訟があり、市長が変わって上原元市長に損害を払わせろという住民訴訟があり、昨年なんと国立市が上原公子(ひろこ)元市長に対して3123万円の損害賠償請求訴訟を提起したことは多くの方が知らないと思います。
対立する候補者を押さえて選挙で選ばれた市長=政治家の責任の取り方とは?という重大な問題です。常に多数派と少数派に分かれる民主主義の中で、多数と闘うことを期待されて選ばれた市長が期待を裏切らない働きをしたら損害賠償を請求されるのではたまりません。
市民主権の政治、市民選挙をめざす私たちとしても考えておかなければならないテーマです。
パネリスト
五十嵐敬喜〈法政大学教授・弁護士〉
上原公子〈元国立市長〉
田中 隆〈上原弁護団・弁護士〉
宮台真司〈首都大学東京教授・社会学者〉
■「国立景観訴訟 自治が裁かれる」公人の友社刊
五十嵐敬喜 上原公子 編著 2800円(税別)
machi-kaeru.com/cn46/index.html
■岩波書店「世界」7月号の五十嵐敬喜氏の記事から