災害時危険回避は数値だけでは割り切れない
2015年9月16日|コラム
9月9日、文京区で初めて大雨・洪水警報による土砂災害避難準備情報が発令され、避難所が開設されました。幸い総雨量は130㎜程度でとどまり、避難勧告や避難指示には至らず、被害もありませんでしたが、そのとき対象地域となったのは以下の地域でした。
対象地域 対象人家等(戸数)
大塚5-40 2
大塚5-20 25
目白台1-18 2
目白台1-20 8
関口2-10 4
春日2-8 1
白山2-3 27
白山5-7 14
西片2-7 20
千駄木1-11 51
弥生2-20 29
弥生2-11 9
合計 192
開設避難所一覧
指ヶ谷小学校 白山2-28-4 03-3811-6005
青柳小学校 大塚5-40-18 03-3947-2471
第六中学校 向丘1-2-15 03-3814-6666
茗台中学校 春日2-9-5 03-3811-2969
音羽中学校 大塚1-9-24 03-3947-2771
これを見て何かお感じになりませんか?
急傾斜地危険個所が対象となっていますが、5m以上の崖が対象なのです。
区の説明では建築基準法上5m以下の崖は建築確認申請で確認義務がないからということでした。
東京都建築安全条例では2m以上の擁壁・崖を規制対象としていますが、実際に大雨で危ぶまれている崖は5m以下、2m以下のところも多いのです。
崖や擁壁は上も下も危険なのに、今回の対象地域には崖下で含まれていない箇所もあります。
崖や擁壁の境界線から何センチ以上離れていれば規制対象にならないという数値基準もあります。
法は最低基準を数値で表すことになっていますが、実際の危険は、擁壁の斜度や古さや地盤、上に建つ建築物や地盤変更など様々な要素が複合的にからんできて、数値で切り分けられないものがあります。
実際、約50年前には小石川3丁目で2mという低い崖が崩れ、下の家がつぶされ、区立小学校の児童が犠牲になる痛ましい事件もありました。
土石流は人災だ!というのは私の高校時代の担任、人文地理の岩渕孝先生の口癖でしたが、痛ましい天災も人災なのです。
想像力を駆使し、周到に防止策をとる必要があります。
小日向では盛り土をした人工地盤に擁壁をつくり、500㎡以下で開発許可をすり抜けたマンション建築を計画していて、議会に請願が出ています。
西片では、擁壁の高さが2m以下ということで安全条例の規制がかからず、下の住民が危険を訴えて建築審査会に審査請求をしている共同住宅兼重層長屋の複合建築計画があります。こちらはさらに500㎡以下しかマンションが建たない敷地に490㎡の重層長屋をつけているため、実質、規制の倍近い規模になるトリッキーさで、しかも地下を擁壁の2m以上に深く掘る計画なので、周囲の不安を余計煽るのです。
どちらも良好な低層住宅地域で、普通に開発許可をとったり、500㎡以下に抑えたりのマンションなら周囲も納得するのですが、建てたい側は最低限の数値を守るだけで目いっぱい建てるという嘆かわしい状況です。
文京区の高低差が大きい土地柄を勘案し、審査会委員の皆さんが建築物の地盤に対する影響を数値基準を超えてよく吟味し、審査会を通った合法の建物が周囲に人災を及ぼすということのないよう、くれぐれもお願いしたいと思います。
鹿児島市で一昨日、建築現場の崖崩れが起きました。幅も高さも50mという大規模なものではありますが、人災引きも切らずです。
news.ktstv.net/e59771.html
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