樋口一葉おそるべし
横浜ボートシアターの語り公演「にごりえ」を聞きました。
語りと言っても朗読ではなく、義太夫でも講談でもなく、エレキギター1本の伴奏で自在に場面を演出し、一葉独特の文語体を感情を込めて読むのですが、まるで映画を見ているような錯覚に陥る不思議な経験でした。
芝居の脚本のように、耳で聞いているのに、いつの間にか目の前に画面を見ている。東大の吉見俊哉先生の弁(joke?)が言い得て妙でした。「耳から入って目から鱗が落ちる」。
丸山福山町で遊女の手紙の代筆をしていたという二十歳そこそこの一葉の、とんでもない恐るべき筆力。
演出の遠藤琢郎さんが仰った「一葉はとんでもない作家」という言葉にピンときてこの公演を楽しみにしていました。
実は一葉がとんでもないというのは、ここ10年ほど伊勢屋公開に関わってきて私がずっと感じてきたことでした。極貧の中で早世した薄幸・薄命の美女という既成概念が、深い洞察力と想像力のある骨太で社会派の書き手という印象に変わりました。もし60歳、70歳、いえ100歳まで生きたらいったいどんな作品を世に送っただろうか。あー返す返すも残念だったなあ。
「これが一生か、一生がこれか、ああ嫌だいやだ嫌だ!」どうしようもない状況で死にゆく遊女お力の心の葛藤は、明治29年にやはり抗えない境遇の中で24歳の生涯を閉じた一葉の、まさに魂の叫びのように聞こえました。心中とも不意打ちとも覚悟の自殺とも知り得ないミステリアスな結末、にごりえ、という言葉のニュアンスも初めてピンときた思いです。絶対にお薦めです。
2月19日(木) 西新井禁煙囲碁クラブ
2月21日(土) 大森Gallery FIRSTLIGHT
演出: 遠藤琢郎 音楽: 松本利洋 語り: 吉岡紗矢
www.yokohama-boattheatre.org/
産経新聞に記事が載りました。
www.sankei.com/region/news/150127/rgn1501270015-n1.html
文京一葉募金
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