理由はない、気合で勝負

恒例になった朝日新聞の「『みる・きく・はなす』はいま」、憲法記念日の5月3日までの1週間、連載されていました。

今年のテーマは「排除の理由」。人種差別、国籍差別、思想差別、さまざまな差別によるヘイトスピーチや排除をとりあげていました。言葉が通じないため意思の疎通が図れない。きちんと説明して理解が得られれば何でもないことでも、面倒だから存在自体を排除する。

もめ事を避けるために原発問題など政治的に意見が分かれる問題に関しては情報を隠す。意見発信を阻止する。そういう問題を扱う集会には自治体の後援名義をあたえない。これらも一種の排除です。

本来は国民や市民の間で広く議論し、合意を形成し、その上で国や自治体の政策や方針を決定すべきなのに、臭いものに蓋、知らしむべからず由らしむべしの原理で、なかったことにして議論を封じる風潮がこのところ目立ってきました。

それにつれてこういう傾向に反対する論調も論壇、出版、報道では増えてきています。危機感を抱く市民も当然多く、健全な傾向ではありますが、ブラックな不安はぬぐえません。大事な計画のパブリックコメントが隠され、情報がなければ議論はできず、首長の考えに気合だけで反対するのはエネルギーがいるから次第に面倒になり、逆に政府はうねりや流れを上手につくり、気合だけで一方向に持って行こうとしているように思えます。

憲法記念日の朝のNHK特集番組、9条と集団的自衛権に関する各党討論での自民党は、具体的なことを聞かれても平和のためとか時代の変化とか抽象論しか言わず、まったく説得力がありませんでした。

去年の今頃は96条改正に燃え、今は集団的自衛権の解釈改憲に燃える安倍首相は、ただただ憲法を改正したいだけ。どんな場合になぜ集団的自衛が必要なのかは、いくら求められても理論構築がないから言えないのでしょう。
もしこじつけて具体例を挙げようものなら、すぐさま不要な理由を100くらい挙げられそうで、副総裁でも首相の代弁はとてもできないはず。かばうのに四苦八苦。声が震えていました。

民のための志なく単に思い通りやりたいだけの政治は迷惑千万で危険です。

国民を説得する代わりに外国で円借款などで評価を得て、原発再稼働を宣言し、なし崩しに国内でも認めさせようという意図は見え見えですが、それも自身の身から出た靖国参拝の錆やオリンピック招致での汚染水のコントロールの嘘などで、そろそろ通用しなくなっているのに無理やりの感はぬぐえません。

現政権は知性や教養を排斥し、気合だけでのりきる「ヤンキー国家」に日本を向かわせようとしているのか。自分のやりたいことを押し切るために知性や教養を排斥すれば確実に国は衰退します。責任を持った論理の一貫性で、自らきちんと方向転換をするべきときだと思います。

 

最近の論壇から、興味深いものを紹介します。

◆「日本のヤンキー化は小泉政権から?」(東洋経済ONLINE) 精神科医の斎藤環さんと歴史学者の與那覇潤さんの対談。

toyokeizai.net/articles/-/33736?page=3

 

◆「資本主義の死の時代を生き抜く」(KOTOBA立ち読み) エコノミストの水野和夫さんと政治学者の白井聡さんの対談。

shinsho.shueisha.co.jp/kotoba/tachiyomi/140303.html#1

キーワードは「資本主義の終わりの始まり」 所得の上位5%の国民総所得におけるシェアが急増、3分の1の世帯が金融資産ゼロ  中間層が消えたところに資本主義や民主主義は成り立たず、ファシズムが台頭  国民は働かせられるだけの奴隷となるブラック企業ならぬブラック国家

資本主義の次にくる価値観は? 自然回帰、原始共産主義的自給自足物々交換? その前に、マイナス成長ではないゼロ成長をキープする技術  資本が自己増殖せず、余剰を拡大再生産に回さず、奴隷状態の国民に回し使い切るしくみ  定常状態が豊かさを取り戻す道  ゼロ成長を実現するには、成長主義から解放され、金融緩和や財政出動よりもっとチャレンジングな、人口・エネルギー・財政の社会経済政策と、それを支える思想と哲学が必要

 

◆しかし一方で、そんな思想や哲学がうまれることは望めないと思わせる「独立する富裕層~アメリカ深まる社会の分断~」(NHKクローズアップ現代)

www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3488.html

税や公共サービスの在り方をめぐり、減税を望む富裕層と貧困層の分断が進むアメリカ社会  富裕層の自信過剰と想像力欠如が際立ってみえました。自分たちの階層は揺るがないという自信、もしものときの社会保障、税の再配分によるセーフティネットは必要ないというおごりは何から来るのでしょうか。やはり反知性、反教養からくるのか、深い疑問です。

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