再開発に20億円の予算

今年度末に出さなければならない原稿をいくつか抱え、調べているうちにこんなものを見つけました。

2012年3月の春日・後楽園再開発の事業認可に際し、東京都が事業計画を縦覧に付したときの意見書です。この時点から少しも進展していないことに驚きと落胆を禁じ得ません。自分でも冷静にきちんと要求していたと思いますが、一方都も区も組合も全然区民の要求に答えていないことが改めてわかります。

2009年に都市計画決定、2012年に事業認可、それから2年がたち、まだ権利変換は終わらず、実施設計も終わっていません。当初の資金計画は崩れ、事業計画は聞いているだけでも自転車置き場や地下部分の変更がありますが、計画変更は公開されません。補助金78億円は手つかずのはずですが、今回わかったのは向こう3年間で57億円投入の予定。そのうち来年度予算で20億円が計上されました。20億は権利変換後の引越しや立退き料と解体工事に充てられるそうですが、資材等の高騰で収支が厳しくなった再開発支援に国が新たに打ち出した補助金の獲得も目指しているとのことです。

事業計画の変更部分や検討課題、風環境や交通計画の検討結果について説明会をず~っと求め続けています。が、区長は「文書で指導して参る」、担当課長と事業組合事務局長(元文京区土木部長)は「今年度中には…、総会で組合員の了解を得たら…、事業計画変更が決定したら…」などと言を左右して引き伸ばし中。担当の地域整備課長は4月1日付で都市計画部長にご栄転が決まっていますが、区民向けのサービスは全然できていないのに、内部評価は高いのですね。ぜひ区民向けにも貢献していただきたい。

以下意見書をご参考まで。

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東京都知事 石原慎太郎様

  春日・後楽園駅前地区第一種市街地再開発事業の事業計画に関する意見書     2012116

                                        文京区 藤原美佐子  

 近隣に住み、当地区の巨大開発により影響を受ける関係者として意見を提出します。

 1.まず、現在は基本設計段階で計画の詳細がまだ決まっていないとのことで、風環境のように実施設計の段階で精査することや、自動車交通動線、駐車場運営のように今後検討することが多い事業計画ですが、総事業費7545千万円、総額78億円という巨額の税が投じられる巨大事業であり、将来に渡って周辺に与える影響が非常に大きいのですから、事業内容を明確に示すよう徹していただきたいと思います。詳細が決まっていないからこれでよいのではなく、決められないのならなおのこと、現段階で丁寧に将来の予測をし、先見性のあるよい計画にしていただきたいと思います。基本設計の段階で縦覧するからには、基本がきちんとしていなければ私たちの税を使ってほしくありません。

 2.補助金事業としての適否について。78億円のうち最も多い約52億円が充てられる「共同施設整備費」の「その他施設費」の内容が明らかではありません。おそらく公益施設などもこれに入るのだと思いますが、都市計画決定前には保育園、高齢者施設、医療機関、大学等の公益施設が入るという説明を受け、詳しくは事業計画時点で明らかになると言われていました。しかし事業計画を見ると、逆に都市計画決定時点より曖昧になり、「子育て支援施設のほか『知と文化を大切にするまちづくり』という考え方に基づく関連施設」などという表現になっています。当時、中央大学が公益施設として候補に挙がっていたので、その後どうなったか縦覧担当の文京区地域整備課に尋ねたところ、まだ決まっていないとのことでした。これでは都市計画に賛同した区民を欺くことになりかねず、大変遺憾に思います。ぜひ公益部分を明確にしていただき、併せて施設費の内訳も示してください。
 52億の次に金額が大きい13億円の算出根拠である「21世紀都市居住緊急促進事業」というのは、「21世紀にふさわしい、ゆとりある生活空間の実現を図る事業」ということで、住宅要件の中には、高齢社会への対応として、「高齢者の身体機能に配慮した加齢対応構造であること」という項目があります。しかし、居室の内部構造はプライバシー尊重の視点から描かれていないので加齢対応の適否がわからず、各住戸はワンルームに近い小さいものが多く、とてもゆとりある生活空間とは思えません。「南街区は1人世帯の若年層向け、北街区は少し広く2人以上世帯向け、西街区は比較的小型の住戸」ということ。これのどの部分に高齢者対応構造があるのかお示しください。

そもそも超高層の141mのマンションそのものが高齢者の身体機能にとっては酷なのではないでしょうか。防災安全性への寄与という要件では、「制震装置導入で揺れに対応した設計」ということですが、それだけでは高齢者対応はできません。エレベータ停止で階段を降りるのが大変、一度降りたら昇れない、長周期地震の際は横揺れ2mで立っていることもできない、などが今回の震災の経験からも容易に推察できます。加齢対応の構造とは具体的にどのようなものか、また、高層階は若年層、低層階は高齢者と住み分ける、あるいはワンフロアに高齢世代と若者世代を等分に住まわせ共助関係を築く、などの具体策はあるのか、あればお示しください。示していただけなければ補助金投入が妥当か判断できません。

 3.人口動態と住宅政策の問題について。人口推計では都心回帰で現在微増の文京区も2020年をピークに2023年には人口減少に転じます。この再開発ビルは竣工が2018年ですから、740戸もの巨大マンションは早晩区内の他地域、あるいは区外のいずれかの地域を空洞化させるか、それとも自ら新築ゴーストタウンになるのではないかと懸念しています。千葉県が、予定より5年早く、首都圏で初めて人口減少に転じたと報道されていましたが、もし文京区も5年早まれば2018年に減少に転じ、竣工と同時に供給過剰、値崩れ、売れ残り、となるのも夢ではないかもしれません。宇部市のシャッター通りが世界最長のお化け屋敷にリメークして話題になっていますが、大変よいアイディアだとは思いますが、東京の都心、文京区の“都市核”のゴーストタウンは笑えません。

こういった場合を十分想定し、推計などをきちんと踏まえ、税投入で他地域を蹴散らしたり自ら破綻したりすることのないよう、戸数の削減を望みます。戸数を減らし、ゆとりある空間をつくり、付加価値を高めることは可能です。また、万が一破綻した場合、さらに税金をかけて救済することになるのはご免ですから、責任のとり方をあらかじめ明確にしていただきたいと思います。

 

 4.駐車場について。言問通りのこんにゃくえんま交差点付近に北街区駐車場の入口をつくる計画は、渋滞を助長するのではないかと心配です。これについては都市計画決定前にも周辺の商店街や住民から不安の声がありました。以前から週末や朝夕には言問通りは渋滞が激しかったのですが、その後白山通り春日交差点の信号の直進と右折が分離されてからは、白山通り上りで春日交差点をシビックセンター側へ右折する車線が渋滞し、言問通りでは、従来は西片交差点で春日交差点方向に左折していた車がその渋滞を避けるために直進し、こんにゃくえんま前で左折するようになりました。そのため言問通りの渋滞はさらに酷くなっていますが、そこに駐車場の入口ができれば、拍車をかけるのは見えています。
 再開発準備組合に問い合わせたところ、交通インフラや交通安全対策についてはよくわからないので、基本設計をした日本設計に聞いてほしいとのこと。言われたとおり聞いたところ、「警察との協議で一応安全面や交通面は大丈夫ということになり、商店街の合意も得たが、渋滞対策など運用面は様子を見て今後検討する。駐車場は地下で全街区つながっているが、南から北への一方通行になっており、北街区は居住者の駐車場が主で、オフィス棟の南街区に用のある車は北入口からは入らないので、駐車場の進入時間帯を制限することも可能」とのことでした。本計画の事業者には地元地権者も含まれていますが、地域のことをよく知らない設計者任せのこのような姿勢は、巨大開発事業者としては怠慢ではないでしょうか。渋滞はあっという間に始まりますので、排気ガスの影響をもろに受ける周辺住民としては、前もってシミュレーション等の調査をした上で対策を万全にすることを要望します。

認可権者としての東京都は、ずっと住んでいる者が経験から言っていることを無視し、様子を見て今後検討するなどと言う住民軽視の開発事業者をしっかり指導していただきたいのと同時に、そのまま認可することのないよう重ねてお願いいたします。

  5.駐輪場について。居住者用駐輪場が地下2階や地上6,7階にあり、エレベータで自転車を運ぶようになっていることが不安です。シンドラー社エレベータでの自転車の高校生死亡事故は記憶に生々しく、エレベータを使うこと自体が敬遠されるのではないか、また、昼間に出たり入ったりする際にはいちいちエレベータで運ぶのは面倒で、居住者は一日の終わりはともかく昼間は路上に放置する場合が多くなるように思えます。前出の日本設計担当者は、「最近のマンション居住者は公共心があり放置せずきちんと運びます」と言っていましたが、根拠は薄いように思います。文京区は現在、放置自転車が大変多く、公共駐輪場が利用しにくいなどの問題を抱え、対策に腐心しています。新たに1200台近くの自転車がふえる計画にあたっては、車対策同様、くれぐれも近隣の迷惑にならないよう、アンケートをとるなど万全を期して、責任をもって実効性のある駐輪対策をするよう、指導とチェックをお願いいたします。   以上  

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