絶対高さ制限&たぬきの森勝訴

2月25日に文京区都市計画審議会が開かれ、議論の末、絶対高さ制限を定める高度地区の変更が承認されました。

近々区長による都市計画決定の後、3月17日に施行される運びとなります。

さまざまな議論の中では、4次素案で高くされた地区、特に本郷など低層住宅混在地域(3次素案のときも

低くしてほしいと言っていたのに逆に高くなった)の低くしてほしいという声や、一定範囲の住民たちが

低くしてほしいと要望し、区が地区計画で対応するよう誘導した千石地区の声が委員から紹介され、

再度規制値の変更が要望されましたが、一事不再議の論調や容積率消化の絶対必要論などがネックとなり、

住民が望む好ましい高さ規制値を実現することはできませんでした。

 

会長からはこれまでの議論を蒸し返すなという強い口調の圧力があり、また提案者の都市計画部や都の行政委員

などからは土地所有権者の資産活用は絶対に守られなければならないという主張も相変わらず強く、さらには

マンション住民でもともと高さ制限には反対だったという規制値を高くすることに賛同の委員から、

低層住居側の主張が強すぎると牽制する意見もでました。

一事不再議というのは議決された場合には仕方のない面がありますが、根本的な誤解や事実誤認をそのままに

しての合意のない言論封殺は権利侵害の恐れもあり、議事進行上も大変問題です。

この期に及んで宅建業界は資産活用の私権を掲げて事実誤認にもとづく署名活動をおこなうなど圧力をかけ、

東京都や区の都市計画部も容積率を100%使えないと私権侵害になるといって規制値を上げましたが、

その前に日照権や景観権、生活権が侵害され、強風で飛ばされそうになったり太陽光発電効率が落ちたり、

圧迫感や工事車の横暴な逆走などに困り果て悩む住民がいたことを忘れていませんか。

これらのことが原因で紛争が多発したことも高さ制限導入のきっかけだったことを思い出してください。

 

高さ規制が結果的に高層化の誘導にならないよう、地域性に見合った高さを望む、ということを私も当初から

主張していました。ところが区は、前面道路条件や地域性から用途地域で定める容積率を事実上使い切れない

地域では、結果的に建てられないので誘導にはならないから、規制値は高いままでよいと抗弁したのです。

それが都知事協議の中で接道要件などを理由とする容積率不消化が拒否され、地域特性を生かした丁寧で

きめ細かい規制と言っていたものが最大10mも揺り戻され今回の都市計画に至ったのです。

 

元渋谷区都市計画課長だったという都の行政委員から、高さ規制が誘導になるという認識は住民に不信感を

与えるので、都市計画審議会委員はあくまで規制だという認識を共有するべきという意見がでましたが、

レトリックはさておき、規制という言葉の語感とは裏腹に、規制値より1センチだけ低くして最大の利益を

上げようとする、景観も住環境もそっちのけの宅建業界の実態をどう考えているのか。

同委員は過去の審議会で、東京都から言われて計画を変えたといわず、変えた方が文京区のまちにとって良いと

考えて区独自に変えたと言うべき、とも発言していました。しかし、都市計画審議会委員の中で合意をつくる

議論はなかったわけですから、一枚岩になれというのはしょせん無理ですし、あまりにも現実無視の一般区民を

ないがしろにするお役所的論理です。私たちは行政のメッセンジャーではないのです。

 

強風でベビーカーを飛ばされない権利、自転車を倒されない権利、陽の光を浴び広々とした空を眺める権利を

侵害される人々がいる一方、それによる被害の社会的費用は、床を増やし高層化し資産活用で潤った人たちは

負担しない。高さ制限で確実に紛争は減ると言われますが、今回のような決め方では、勝ち目がないから

紛争を起こせない人を増やすことになるのではないかと危惧します。

文京区が美しくない乱開発と日陰のまちになる前に起死回生の策としてようやくたどり着いた高さ制限なのに、

ヨーロッパでは普通に区別できる私人と個人を区別もできない横暴な論調にあっさり妥協してしまった

ふがいなさに忸怩たる思いです。

 

落ち込んでいた矢先、嬉しいニュースが入ってきました。以前にもご紹介した新宿区下落合のおとめ山、

たぬきの森の違法重層長屋問題で建築確認を取り消された建築主の新日本建設が、都と新宿区を相手取り

損害賠償を求めて起こした訴訟に、請求棄却の判決がありました。

www.jsc-com.net/shimoochiai/news4/799.htm

判決要旨をみると、建築基準法や安全条例は居住者や周辺住民の財産を守るものではあるが、所有者の
建築物に関する利用価値などの財産上の利益を保護するものではない。  また、
建築工事が続行不可能になったのは内在的制約が顕在化したものにすぎず、取消に伴う財産的損失を
認識しつつ工事を開始していることからも、財産的価値が失われたとは言えない。というようなことが
書いてあり、一審なので控訴は必至ですがなんとなく嬉しい。
事業者からの訴追を恐れず筋を通してほしいと思います。
行政が土地所有権に付随する資産活用権を絶対視するのは、事業者に訴えられる恐怖があるのだと思いますが、
新日本建設に限らず多くの業者は審査請求や訴訟を覚悟でイチかバチかの儲け主義を張っているのですから、
司法が頑張っているように行政も住民の味方になって体を張ってほしいものです。
事実、昨年から区に新設された法務担当課長に伺ったところ、今文京区内では住民と争っている事案は2例あるが、
業者と争っている事案はないとのこと。
頑張ってほしいから五十嵐先生の著書など進呈しようかな。いえ、買ってもらおう。

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