都市計画は誰の財産・利益を守る?

「東京に公園を造った男」井下清(いのしたきよし)を知っていますか?

明治から昭和にかけて東京都公園緑地課長として多くの公園や墓園の造成に尽力し、生涯を公園緑地の発展にささげた人です。その研究熱心で誠実な人柄が渋沢栄一や岩崎弥太郎などの信頼を得て、井の頭公園・六義園・多磨霊園・清澄庭園など恩賜公園や寄付公園を多数手がけ、「貰い頭(もらいがしら)」の異名をとったそうです。

文京区でも大塚公園や震災復興小公園の元町公園・旧新花公園などの設計・監修をしましたが、折しも4月からの新年度、区では元町公園・旧元町小学校の保全活用検討と新花公園の再整備計画にかかります。これまで文京区が改修にお金をかけて保全してきたからこそ、これらの由緒ある素晴らしい公園が今の形で残っていることに感謝しています。

今年は彼の生誕130周年であり、また彼が設立した東京都公園協会の60周年にもあたり、日比谷公園では「緑と水の市民カレッジ」で2月27日まで特別企画展「井下清と東京の公園 緑に生涯をかけた彼の哲学」を開催しています。掛け値なしに面白い、ぜひご覧ください。   www.tokyo-park.or.jp/event/2013/12/i.html

これに合わせて都政新報1月21日づけに特集記事が掲載されました。こちらもとても面白いのでお勧めです。

www.toseishimpo.co.jp/modules/news_detail/index.php?id=2548

公園協会の広報誌「緑と水のひろば」74号の特集記事「東京緑地計画とその遺産」では、都市計画とは何かについて、東京大学大学院准教授小野良平さんが感銘深い考察をされています。

1919年の都市計画法制定により公園が都市になくてはならない施設として位置づけられたが、同時に都市計画法は「風致地区」という公の所有ではなく地権者所有の一定地域に開発制限をかける制度も設けた。ご承知のように第1号は明治神宮内外苑で、その後、洗足、善福寺、石神井、多摩川などが指定された。風致とは、自然と歴史が醸し出す良好な環境というような意味だが、この制度は住環境として地域全体の質を維持する発想に基づき、辺縁部の良質な宅地を無秩序な都市化から守る狙いがあったようだ。立役者は井下より10才ほど若い内務省都市計画課技師、北村徳太郎。北村は、病気にならない環境づくりを志向し、風致地区にとどまらず「東京緑地計画」へと壮大な夢を結実させた。 www.tokyo-park.or.jp/parkfriend/download/

74号は最新号で、まもなくアップされると思います。

3月17日には文京区で絶対高さ制限を定める高度地区指定の都市計画変更が施行される予定で、4月からは区条例の風致地区条例も施行されます。高さ制限や風致地区が個人の財産・利益の侵害になるという根強い考えがあり、高度地区指定を撤回せよとの署名運動や陳情が宅建業協会などでおこなわれていますが、小野さんの論考を読むと、空地や空間、光や緑の豊富な秩序ある住環境をもたらす都市計画、すなわち公園計画や高さ制限や風致地区規制は、そのまちに住むすべての人の健康と文化的生活のためであることがよくわかります。

良い景観や住環境は、個人の経済的な利益のためではありませんが、資産価値を上げるも下げるも計画次第であり、究極的には財産とも言えます。新年度、都市計画部の組織変更がありますが、公園緑地は大事な都市計画なのに土木部、開発建設は都市計画部と分かれる縦割りはそのままで、井下や北村の描いた壮大な夢の延伸には期待できそうもありませんが、住環境の維持をめざし乱開発を規制しようとした卓越した技術者が大正の時代の都市計画行政にいたということは感慨深いものがあります。今、都市計画行政を担う人たちには、当初の理念に立ち返り、永遠などそもそもあり得ない個人の財産を振りかざし計画の撤回を迫る勢力に敢然と抗弁していただきたいと切望します。

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