オランダの教育に学ぶ

「子育ちと教育を考える東京フォーラム」主催のパネルディスカッションに参加しました。大田・品川・目黒生活者ネットワークの協働によるフォーラムです。

基調講演

「一人ひとりの人間を大切にする国、オランダの教育から学ぶ」

先進国で最も‘幸福感’‘自尊感情’の高いオランダの子どもたち。キーワードは「豊かな違い」です。そこにはどんな教育や社会の制度があるか、オランダ在住の教育・社会研究家リヒテルズ直子さんのお話は、心に深くしみいり、ときにハッとさせられる話でした。私自身過去の言動を顧みて、しまったと感じることもありました。ぜひみなさまにも一端を知っていただきたいので、長くて恐縮ですがお裾分けします。

 

第一に教育の自由とインクルージョン。画一的ではなく教育者が個々の子どもに合わせて工夫を凝らした授業がおこなわれています。特別支援教育が障害のあるなしに拘わらずすべての子どもの個別指導という意味で保障されていることが、オランダの子どもたちの幸福感、学力、社会的能力、心身の健康度などの高さにつながっているのだと感動しました。

子どもを競わせるのではなく、教師や学校が受益者である子どもたちのニーズを満足させ幸福にする教育を競う。これこそ教育の醍醐味ではないでしょうか。日本の教育界にこの醍醐味を味わってもらいたい。ちょっと誉めすぎかなとも思いますが、リヒテルズさんは度々、オランダが一番良いと言っているのではない、自分の話を聞いてみんなが日本に欠けているもの、一番良い方法は何かを考えてほしいのだと言っていました。

私のメモに基づいているので正確さに欠けるかもしれませんが、基礎には民主的シチズンシップ教育があり、人との関わり方の基本、人の話をよく聞く、さえぎらない、否定しない、罵倒しない、そして自分の考えを理解してもらえるように話すという、よくアサーションと言われるような訓練があるようです。大人でもなかなか難しいことですが、これを幼児の頃から(学齢は4才から)教育としておこなう。単に知識の伝達ではなく広い意味のリテラシー(単なる識字ではない表現、記述、理解、伝達など情報を扱う能力全体)を学校で学ぶのです。

私見ですが、日本の大学のレベルが世界と比べて低いのはこの基礎ができていないからではないでしょうか。高等教育こそ知識の伝達よりも自由な発想や思考を伸ばすリテラシー、学ぶ態度が重要だと思います。入学が秋か春か、就活をいつ始めるかなんて関係ないです。だいたい黒スーツを着た黒軍団を一斉にスタートさせる発想が気持ち悪い。豊かな服装の違いチェックでもしたらいかが?オランダは就活を4才から始めているとも言えます。

 

そして科学、特に脳科学の採り入れ方が、これぞ科学の神髄という感じでした。日本だと○○科学の知見に基づき・・・などというと、とかく学力偏重になりがちですが、それは動機不純だからで、子どもの幸福や健康な成長というまともな目的でならICTも脳科学も素晴らしい成果をもたらすということです。

面白かったのは25才まではポジティブな話しか頭に入らないという話。○○してはダメ!などの禁止語が来ると、頭は次の数十分間は何も吸収できなくなるというのです。走っちゃダメ、しゃべっちゃダメ、いじめてはいけない、迷惑をかけてはいけない・・・日本の学校はネガティブな表現が多すぎです。25才ですよ!何と私は子どもたちの吸収を25年分も奪ってしまったのだ。ショック!

もうひとつ、自由の質は同じヨーロッパでもフランス以南のカソリックの国と北の方のプロテスタントの国とでは違うという話。よく愛人文化と結婚離婚をくり返す文化などと比喩されますが、南はカソリック文化から色を抜いた自由(日本の自由観はフランスに近い)、オランダも含む北は個人を尊重する色のある自由、とリヒテルズさんは言っていました。それが多色、多様性、豊かな違いを楽しむ文化を育んだのでしょう。

 

そして最後に日本の近代社会の発展や民主主義の課題についてです。個の自立が完成しないまま疑似法治国家となり、和魂洋才で短期間に経済発展し先進国の仲間入りをした日本ですが、調和を重んじる和魂でまとめ、「違いが豊かなものである」という民主的市民社会のエッセンスがわかっていないため、脱近代、グローバル社会に突入したときにひずみが顕在化しているのです。画一化された精神で全体の利益や経済を追求し原発を54基もつくってしまった。個の尊重を確立し、日本古来の木造建築の技術などに立ち戻る、洋魂和才に転じてはどうかとリヒテルズさんは提案しています。

国政に期待できない今、地方自治体から制度を変えていく努力をしてはどうかという提言でした。教育委員会も教員も保護者もシチズンシップをモットーに協働し、創意工夫をすれば、個々の子どもの豊かな育ちを守るしくみができるかもしれません。

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