防犯装う監視の「目」

まもなく憲法記念日、65年前の5月3日に日本国憲法が施行された。国旗国歌の問題、直接請求の問題、沖縄の基地問題など、なぜかこの頃、憲法を考えることが多くなった。

朝日新聞で「『みる・きく・はなす』はいま」が連載を開始して、今年ではや25年になるという。言論封殺が目的の襲撃事件で阪神支局の記者が亡くなった事件を受けて始まったシリーズ。ものを見聞きし言うというあたりまえの権利が脅かされる、異質なものに対して不寛容な社会が依然として続いている。

26日からまた連載されているが、29日付けの「防犯装う監視の『目』」では、文京区の事例が取り上げられている。住宅街の住人が突然大塚警察署の訪問を受け、「防犯カメラ」の設置を勧められ、設置したという話。警察は「物騒なので」と言ったが、事実は向かいの家に身を寄せていた犯罪容疑者の監視が目的だった。最近では警察だけでなく企業や個人がカメラを設置する例が増えているそうで、5年ほど前まではほとんどが防犯目的だったのが、今では半分が犯罪捜査目的、「犯人捜し」だそうだ。

カメラでいつも見張られているのは気持ちのよいものではない。もちろん行動は制約され、プライバシーの侵害もあるが、それでも犯罪への不安から、安全・安心への期待の方が大きいという。日弁連がカメラ設置に関して、「深刻なプライバシーの侵害」「設置・運用を定めた法律を制定すべき」とする意見書を出したそうだが、文京区では「安全・安心まちづくり条例」があり、「防犯機器の設置」条項を設け「自由及び権利を尊重しなければならない」というゆるい制約のもと、補助金も出している。そして、「補助金交付要綱」と「防犯カメラの設置及び運用に関する指針」で映像の管理などの細かいルールを定めている。指針では「設置する地域団体がカメラの運営基準を書面で作成する」という要件が規定されているが、これはあくまで運用の指針であり、到底プライバシーの侵害を防ぐ歯止めとはなりえない。

私の住む町では、今年の新年会に本富士警察署の人が防犯カメラのお勧めにやってきて(もしくはこちらからお呼びしたのか?)、現在町会で設置を検討している。プライバシーの侵害を懸念して設置に反対と思っている人は多いはずだが、口に出すのが憚られるのか、説明会への参加も少なく、ほとんどの意見は次世代のために安全な町を残したいなど賛成意見。町会内の亀裂をおそれて直截な意見をきらう向きもある。

町会では、多数決にはなじまないということで、総会での裁決もせず、全会員の了解を得ることもしない考えのようだ。町会というそうでなくても物の言いにくい風土の組織が、権利侵害というややこしい課題を引き受け、きちんとした規制ルールもなしに監視カメラ設置・運営の決定権を担うのは危険すぎないだろうか。近寄るのがさらに面倒な組織、あるいはお上のような権力組織ということになり、せっかくの町会民主化の流れに水を差すことになるかもしれない。

せめて設置条件(過去に凶悪犯罪のあった場所に限るなど)、意見集約方法、決定方法(総会で採決など)だけでも条例で定めるべきではないだろうか。

それにしても文京区ではまだ繁華街や商店街2ヶ所にしか設置されていないのに、区内でも閑静といわれるこの町に、7つも8つもカメラが常時監視する時代が来るなんて、昭和の歴史を多少とも知る者としては、凶悪犯はともかくちょっとした犯罪よりずっと恐ろしい気がする。カメラがなくても、賢いコミュニティの力や住民のセンスで安全で温かいまちができないものだろうか。

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